J Gillsの見学報告
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St. Luke's Cataract & Laser Institute 見学報告

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米国には、年間白内障手術を10、000眼以上施行している眼科医がいる、という話は以前から聞いていました。5年前の5月にカルガリーのDr.Gimbelのところを訪問した時にも、選択肢の一つとしてDr.Gillsの診療所もあがっていたのですが、数をこなす眼科医ということであまり良い評判でなく、Gimbel Eye Centerを選択することになりました。

今回、前房内麻酔、limbal relaxing incisionと、立て続けに一般化し長続きしそうな技術を生み出してきていますので、Dr.James P Gillsがどのような組織を持ち、どのように運営しているのかを確かめるために、見学することになりました。

James P. Gills, MD訪問記
平成10年11月4日、FloridaのTampaの空港ホテルに宿泊しました。11月5日朝、レンタカーを借りて道路に出ると,ハリケーンの余波で雨が激しく降っていました.30マイルほど北上すると,FloridaのTaponspringsのSt.Luke’s cataract & Laser 
Instituteが道沿いに見え,入り口を入ると,広大な駐車場がありました.

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handicap用の車間距離が車一台十分に入るほどの駐車場から,手術患者さんの駐車場,患者さん用の比較的広めの駐車場,そして,職員用,医者用の駐車場が見渡す限りの駐車場で,これがすべてDr.Gillsのだったらすごいな、といいながら入り口に着くと,建物がまた広い。 Dr.Gills用の入り口があり,そこから入るとすぐ受け付けで,すぐにDr.Gillsの秘書が現れました。非常に感じのいい方で押しつけることがなく,こちらが何を目的にしてきたのか確認しながら,その場で予定を組んでくれました。
待合室が広い,かつ何個所にもわたって分散して待合室がある。緑,絵画,窓からの外の景色が素晴らしい。この理由は,遠方からの来院患者さんを同日手術で、来院した日に検査から手術まで施行するので,患者さんによっては診療所に10時間近くいなければならないことがあり,そのためのアメニティーにかなり気を使っているためということが、後でわかりました。患者さんに対して非常に親切,というのが全体を包むexcellence with loveの哲学のようでした。

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1 一日来院患者数1500,職員250,医師13名

白内障手術医が2名、網膜硝子体専門が2名、一般眼科医が3名、手術患者さんの健康チェックのための内科医、麻酔医が各一名、その他レーザー、美容手術専門医などの医師がいました。網膜硝子体手術も日帰りで施行していました。

2 James P Gillsは一日60例週5日年間40週 年間計12000眼

Dr. Gillsは朝の9時から11時まで外来診療をし、その間にもう一人の眼科医が20例の白内障手術を施行します。11時から5時までがDr. Gillsの手術時間です。手術室は3室を使い、各部屋を順に回っていきます。PA(practitioner asistant, 大学を卒業後2年間の専門的な訓練を受けた、医師の助手をする技術者)が、患眼の消毒、ドレーピング、PEAの接続、Slic inscision, parasenthesis, intracameral anesthesia, CCC, hidrodisectionまでを施行し、次の部屋に移動します。Dr. Gillsは超音波乳化吸引術、皮質の吸引、眼内レンズの挿入を受け持ちます。患者さんは、入室、退室を急がされることなく、ゆっくり動いている感じです。手術室の中には50ー60歳の患者さんと話をしながら患者さんの心電図、血圧などをチェックしている人、直接Drの介助をする比較的若い看護婦、それに外回りに若い看護婦がもう一人でした。各部屋に3人づつ配置され、その各部屋をDr.とPAが回っていくというスタイルです。

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3 同日手術

当日初診できた患者さんをその日のうちに手術する

患者さんに精神的負担、肉体的負担、経済的負担、時間的負担をかけない究極がこのシステムかもしれません。この組織にくる患者さんは、白内障の手術を受けることを意図して来院するのですから、その日に白内障の手術をするといっても精神的な負担はないはずです。短時間の手術で、点眼麻酔、眼内麻酔ですから、痛みがなく肉体的負担も軽微です。当然来院回数が減りますから、経済的負担も軽減されます。時間的負担はもちろん減ります。

この事が可能なのは、Dr.Gillsが診療室として7室を同時に使うことができ、手術室として3室が同時に使え、広大な待合室と、有能でかつ多数の職員の存在があるからだと考えられました。

4 術前管理

白内障手術患者の半数が初診の日の手術になります。術前の抗生物質の点眼投与はできないことになります。このため手術直前に薄めたヨードの点眼、術後に抗菌剤の眼内投与を施行しているようです。これで眼内炎の頻度を1/7,000眼にしているようです。

5 術後管理

術後30分に眼圧の計測を行っていました。

高すぎれば、眼圧を押さえる処置が必要ですし、低すぎる場合にはwound leakが考えられるので、leakに対する処置が必要になります。術後30分が重要だと強調していました。

6 超音波は浸水式


浸水式を選択する理由:   Dr.Holladayが指摘しているように、浸水式の方がよりばらつきの少ない検査値が得られることと、同日手術のため、角膜に上皮障害を生じると術中の角膜曲率測定が困難になることを強調していました。

計算式はHolladay IOL Consaltantを用いてpiggy bag minus piggy bag、毛用溝固定,前房レンズの計算が瞬時にできるようになっていました。

7 角膜内皮

角膜内皮は接触型で検査結果を連続的にヴィデオ記録し,ヴィデオキャプチャーから解析するシステムでした。


8 病歴管理は時系列管理

病歴は時系列管理でterminal degit管理ではありませんでした。

多分同日手術で再来率が極めて低いため、時系列管理で何ら問題がないのだと思われました。

9 経済的問題

5年前に一眼5000ドルであった手術費用が、現在2000ドルになっているとのことでした。そのかわり超音波、角膜内皮測定は別個請求になっているようです。

10 感謝の気持ち

一人一人の患者さんに有難う有難うといっているのですが,何が有難うかわからない。手術が終われば患者さんのひざをたたいて、thank you! thank you! thank you! という感じです。自分の眼科に来てくれて有り難うなのか、手術がうまく行くように協力してくれて有り難うなのか、よくわからないのですが、とにかく感謝の気持ちに満ち溢れているDr.でいいなーと思いました。

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11 論点

James P. Gills, MDはすべての提供されるサービスは自分自身が作り上げたものであるから、たとえ手術であってもその一部を自分の信頼できる技術者に代わりに施行させれことに問題はないと考えている。Dr.Gillsが満足のいく技術水準を提供できることを確認し、常にそれを確認しつつ手術サービスの一部を提供を任せている。その代わり、術前の患者さんの診察をし、問題のある患者さんを診察する。

Gimbelは手術に関してはすべて自分で施行する。その代わり、術前術後の患者さんの診察は代わりの医師に任せている。

ある程度を超えた数の患者さんに手術を提供していく時、すべての業務を一人の医師がカバーできなくなった時、どのような方法を取るべきなのか。私には当分関係のない話ですが、議論の対象にはなりそうです。

術後の患者さんの屈折度が、高度近視であれ、高度遠視であれ術前予測値と1ディオプターの違いが起これば翌日に眼内レンズを入れ替えるというように、一人一人の患者さんにたいするサービスの質の管理に細心の神経を使っている組織に、年間16、000例の白内障患者さんが集中するということに納得できた一日でした。