ASCRS98報告
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98年4月18日から23日までの5日間米国サンディエゴで開かれたアメリカ白内障、屈折矯正手術学会の私的報告です。内容に誤りがあるかも知れませんが,ご了承願います。

今回の学会への出席目的は二つでした。
1 眼内レンズの選択に関しての考え方をはっきりさせること。
2 手術手技に関して新しい機械の導入が必要なのか,現在の機械のままで手技的に変更を加えるだけで,対処できるのか。

1 眼内レンズの選択に関しての結論は、
切開の大きさを小さくするのであればシリコンをインジェクターを用いて挿入する 。後発白内障を避けるのであればACRYSOFを用いる。強角膜切開を選択している私としては、ACRYSOFを主体に使い、透明角膜切開時にシリコンをインジェクターを用いて挿入することになります。


理由としては
1 APPLEの死後摘出眼球による組織病理学的報告によると,後発白内障がレンズのエッジと後嚢の接触部で止まっており,レンズ後方の水晶体嚢の混濁がほとんど見られないこと。シリコンレンズでは、その効果が見られないこと。
2 現在強角膜切開を用いており,切開創を3 mmにしなければならない積極的な理由がないこと。
3 シリコンに見られる継続的な前嚢収縮,あるいは,レンズ上のデポジットは継続的な炎症を意味していること。
4 CMEの起こる確立がACRYSOFで少ないこと。
5 透明角膜切開での手術を必要とするときは,選択肢として,5.5 mm ACRYSOF,インジェクターを用いたシリコンレンズを選択する。少しでも結膜を切開すれば、つまり、強角膜輪部側で切開すれば、創面の癒着が透明角膜切開に比較し飛躍的に早くなるとの報告があり、この部位での切開であれば、6.0 mm ACRYSOFの選択となります。

アラガンSI30を約600使って,後発白内障,レンズ変移,前嚢収縮が気になっていたときに,ACRYSOFの5.5mmがでてきたので,同じ創口の大きさで使えるならとACRYSOFに乗り換えたところ,今度は5.5mmオプティクスに起こるとされている虹彩キャプチャーを約100例中4例おこしたため,6.0mm ACRYSOFに変更し約300使ったところで,眼内レンズが時々光ること,後嚢のストリエが原因と思われるバゴリニ現象,創口が4.0mmであるため術後ごく軽度の術後乱視がでることが気になり,新しいUNFOLDERと共に表れた3.00mmの創口から挿入できるアラガンSI40を使いだしたところで,今回の学会出席となり,この結論になりました。

眼内レンズに関しては,この他 以下の話題が気になりました。
POSTERIOR CAPSULE STRIAE: 術後のバゴリニ現象をいつも気にしているので、避ける方法似ついてのはなしがあるのかと思っていたのですが、手技、レンズの選択などに関しては言及されていませんでした。
レンズ形状が後嚢混濁に与える影響について: 鋭いかどを持っているAcrySofが後嚢とedgeの接触部で細胞のmigrationを物理的に押さえているのに対して、かどの丸いレンズでは、細胞のmigrationを物理的に押さえることができず、後嚢混濁を起こしやすいという報告です。
老人性黄斑変性に対するPMMA SILICON眼内レンズの影響: 老人性黄斑変性の患者さんにはfocusがはっきり合うPMMAよりもfocusがあまいSILICONのほうが視機能予後がいいとの報告でした
PIGGYBACK眼内レンズ: 高度遠視の白内障術後の+レンズを複数入れる報告をしているGillが今回は高度近視の白内障術後にーレンズを複数入れた症例を報告していました。
眼内プリズムレンズ:黄斑変性を片眼に持ち片眼だけ中心暗点を持っている患者さんに、眼内プリズムレンズを入れることにより、周辺視野を中心に持ってきてより良好な両眼視状態を提供しようというものです。術後の患者さんをビデオで見せていましたが幸せそうでした。
眼内望遠鏡: 黄斑変性で中心視力の低下している患者さんに、telescopeを眼内に移植するというものです。角膜全層自家移植を必要とする手技で術後得られる機能と、手術浸襲をはかりにかけてどちらをとるかは難しい判断のようです。どのような患者さんが手術適応になるのか、という感じでした。

2 手術手技、機械,器具に関しての結論
今のままの機械で、新しい器具を導入し,手技に多少の変更を加えるという結論です。

手術機械に関しては,93年9月にSTORZ Protegeを導入してから,手術機械に関しての変更は,96年11月にMICROFLOWチップに変更したこと,それによる吸引圧の変更,97年2月からMASTEL FINETUNINGで超音波チップの接続性を良好にし、エネルギーの伝動効率をよくし,刃物としての切れ味をよくしていることです。機械はこのままとしました。

理由としては

H.V.GimbelのLIVE SURGERY BROADCASTで久しぶりに
Gimbelと時間を共有しているという実感を持ちました。5年前のSeattleでのASCRSの時にカルガリーにいって見学させてもらってから,5年ぶりになります。手術日にはまずGimbelのビデオを30分ほど見てから手術を始める私にとっては,同じ時間に進行している実況放送を見るのは殊更の感動です。今回はかなり難しい症例を扱っていたのですが,相変わらずのリズムで、機械に依存しない手技を見せてくれました。

W.F.MaloneyはStorzの機械を使っているのですが,Phaco Flipのセッッションでどのチップを選択するかと聞いたとき,より開口部が大きい,Normal Tipや MicroFlowPlusではなくMicroFlowをすすめていました.

PhacoFlipの手技も今の機械で十分こなせる手技という印象です.H.I.Fineとは一緒に写真をとってもらったのですが,彼の手技も機械に対する依存性を見せていませんでした。

南先生には,今回初めてお会いしたのですが,Storz Protegeを使っていらっしゃいます。M−HOOKという,CHOPPER, SPLITTER, SPATULAになるHOOKを開発し続けていらっしゃるのですが,今回一緒に食事をする機会がありその理論的裏づけ,その繊細さに初めて接し,M−HOOKを使ってみる気になりました.余りにもその形状が先進的であるため,受け入れていなかったのですが,このお医者さんが開発したHOOKであれば信用していいのではないかと思いました.以上のことで,機械Storz Protoge、MicroFlow Tip,Mastel MicroTuning,M−HOOKの取り合わせでしばらく戦うことになります。

会長講演がありました。
医者の置かれる経済環境の悪化から,最後に医者のことを気にしてくれるの誰かということで,それは患者さんであるという結論でした.当たり前のことのようですが,何時でも,どこでも,まず患者さんを第一に置くことから始まる.いつでも,どのような時でもまず患者さんのために戦っているのだということを確認しながら戦わなければならないし,そうしなければ誰も気にしてくれなくなる。だから全力を挙げて患者さんのために働かなくてはならないし、戦わなくてはならない。当然のことを会長が話されたのですが,もう一度今自分がやっていることが,患者さんのために全力で取り組んでいることなのかどうか,細部に渡り検討しなければならないと思いました.

招待講演はFUTURE VIEWでinternetの影響の話でした

PHACO FLIP
PHACO FLIPのコースにでました.MALONYのPHACO QUICK CHOPとの取り合わせはあまりいいとは思わないのですが,David C Brownの手技は秀逸でした.核をSUPRA CAPSULEに脱臼させて,後方から乳化する方法です。滑らかな後部皮質が前方に多少突出した状態が気にならないでもないのですが、分割せずにそのまま丸ごと後方から乳化していました。すべての超音波エネルギーを核の乳化にあてるためのベベルダウンの核乳化がありますが,ベベルアップで同じ操作ができるという点で,PHACO FLIPは取り入れようと思います。

 VISCO CANALOSTOMY
このコースにでました。白内障の次は屈折でその次は緑内障のようです。白内障屈折手術学会で緑内障のコースが人であふれるというのもおもしろいことです。要はトラベクキュロトミーの前房への切開をせずかわりにシュレム氏管をヒーロンGVで膨らませ,しばらくの期間シュレム氏管の中に残留させることにより,トラベキュルムを機能させると共に,癒着を防ぐということのようです。なぜ、眼圧が下がるのかという質問には,科学的な裏付けがないので答えられないといっていました。ただ,手技の開発者の南アフリカのRobert Stegmannは新生血管緑内障以外の約250人の患者さんの90%にいい結果がでたと報告していました。平均して術前28から術後17程度まで低下しており,最初に手技を初めてから7年ということでした。H.V.Gimbelも97年2月から導入しており30例程度手術施行しているようですが,手技のラーニングカーブを示すのだといって一例目からの手術を提示していたのには感心しました.講演した後で,後は他の講演者から勉強させていただきます,と付け加えていました。正直で,誠実でかつinnovativeであることには何時も感心させられます.会場にMaloneyが聞きにきており盛んに質問をしていましたから,Maloneyも始めるのかもしれません。


前嚢染色
毒性のことも検討されており,その辺がはっきりしてくれば,intmessent cataractにはいい武器になると思われます.film festivalでもwinnerになっていました.

 REOTHERAPY
wet typeのDrusenに対して透析で治療しようという試みで,film festivalでもwinnerになっていました。

 眼内レンズ挿入眼の調節
ultrasound biomicroscopeにより確認された眼内レンズの調節による変移を分かりやすく見せていました。Film FestivalのGradprixをとっていました。

眼内コンタクトレンズ
眼内コンタクトレンズのライブサージェリーがあり人気を集めていました。片眼LASIC 片眼ICLの患者さんは眼内コンタクトレンズのほうを好むようです。     

業者の提供するプログラムについて
業者の提供しているプログラムを今回は積極的に見ました。偏る向きもありますが概して質のいいプログラムを提供していました。Staarの眼内コンタクトレンズのlive surgery、AlconのGimbelのlive surgery, Appleの死後眼内レンズ挿入眼の組織病理学的評価などいいプログラムでした。