定期交換コンタクトレンズの特徴と処方方法

1レンズは劣化するまえに定期的に交換される。
2通常のソフトコンタクトレンズに比べさほど高くない。
3患者さんにとってレンズの管理が単純で簡単である。
4医者にとって患者さんの管理が迅速で簡単である。
5耐久性のない、高含水性で薄いレンズが選択できる。
6簡単に処方でき問題が起きにくい。

ディスポーザブルレンズは1987年アメリカで発売され、わが国でも1991年に処方可能となった。連続装用1週間の使い捨てで市場に導入されたが,連続装用による角膜障害の問題から、定期交換レンズが米国で1991年、日本で1994年に導
入された。ディスポーザブルレンズおよび頻回交換レンズは,発売以来急速にシェアを伸ばし,アメリカでは両者の合計CL処方の40%を占めるに至っている。

定期交換SCLの定義
定期交換SCL(planned replacement)は,頻回交換(frequent replacement),予定交換(programed replacement)SCLとも呼ばれる。FAD(米国食品医薬品局)の規定では,ディスポーザブを,一度でも眼から取り外したものは2度とは使わないことと規定している。このため、はずして、洗浄し再挿入するシュアビュー、メダリスト、UVフォーティーンなどの定期交換コンタクトレンズは、この意味でディスポーザブルレンズとは呼ばないということになる。

患者側の利点
患者側の利点としては、従来型のCLに比べよりきれいなコンタクトレンズを装用することができること、タンパク質の付着の少ないSCLが装用できることにより,アレルギーや感染を起こしにくいことがあげられる。鋭敏な患者にたいしても,充血,巨大乳頭状結膜炎,ドライアイの症状などを起こしにくい。汚れていないことにより,良好な視力が提供できる.タンパク付着,変形などからくる不快な装用感から開放される。また、軽く洗浄し、同一の液で一晩つけておくだけで、表面活性剤や酵素洗浄液を用いないですむこともあり、管理が簡単である。レンズをなくす、破ったり、傷つけたりすることを気にしなくてすむなど、精神的、経済的負担が軽減される。

医者側の利点
医者側の利点としては、きれいなレンズが問題を起こしにくいことから、不愉快さ、見えにくさ、充血などの訴えのある患者さんの来院が少なくなり、検査が迅速で簡単になる。レンズがなくなることで定期検診を受けることになり、また、
レンズケアーが単純で簡単なため患者さんのコンプライアンスがよくなる。患者さんにも,医者にも,経済的にも,時間的にも,精神的にも,肉体的にも負担の少ないサービスが提供できることとなる。


CL処方
CL処方に関してはレンズの厚みが薄く、高含水率で柔らかいため”ドレープフィット”となる。BCに関わらずまず試してみて決めるというフィッティングである。大多数の症例は一種類のBCでフィットする。まず自覚的に装用感がよいこと、安定した矯正視力が得られること、レンズが角膜全体をカバーし、センタリングがよいことを確認する。そしてレンズの動きに関して、瞬目時にレンズに0.5 mm以上の動きがあること、上眼瞼を指で軽く押さえてレンズを下方へずらすときに、レンズがスムースに動いて指を離したときに元の位置に戻るかをチェックする。
ステインや乾燥を避けるために,CLは角膜の全域を覆っていなければならない。CLのずれが大きいと,CLの光学部の端が瞳孔領にかかりフレアーを自覚することがある。通常のレンズよりもタイトなフィティングに見えても、装用に問題がない症例がある。タンパク質の付着が少なく,通常のsclでは装用に支障がでる可能性のある症例,ドライアイ,アレルギーなどの症例によい。新しく処方する場合には、処方後1、3週後に病歴、レンズの取り扱い、視力、オーバーリフラクションなどを再検し、レンズをはずした後の角膜曲率測定,ベースカーブの変更、レンズ材質の変更,装用時間,レンズパワー,レンズケアーの変更などをおこなう。一定期間のテストレンズはメーカーより無償で提供されるため、まずレンズを購入しなければならない従来のSCLに比し、処方変更にともなう煩わしい事務作業から解放される。定期交換ソフトコンタクトレンズは簡単に処方でき,問題を起こしにくい。

CL管理
定期交換の期間は現在2週間以内であるが,コールド滅菌のみで終日装用の
Surevue、UVフォーティーン、煮沸消毒で終日装用、連続装用も可能なMedalist
がある。しかし,値段、渡すレンズの箱数、経過観察間隔、細かいケアーなどの
説明で従業員の混乱を避けるため、一つの診療所で複数のシステムを提供するこ
とは避けるべきであり、当院では単一商品のみを扱っている。
洗浄、消毒では、ONE−STEP多目的洗浄液が、簡便性という定期交換レン
ズのテーマに合致するため広く受け入れられている。アレルギーを起こしやすい
患者さん、敏感な患者さんには,防腐剤の入っていない過酸化水素水を用いたシ
ステムのほうがうまくいく。現在使用可能な定期交換レンズに関しては酵素洗浄
は必要ない。大切なことは洗浄液、あるいは、多目的洗浄液による洗浄である。
この洗浄をやらない患者さんがいるが,消毒のない洗浄はあっても,洗浄のない
消毒はないといわれるごとく、洗浄は感染防止の最大の処置である。

CL処方箋
CL処方箋に関しては、平成9年6月25日の公正取引委員会からのコンタクト
レンズの流通、取引慣行等に関する実態調査報告書についてで、コンタクトレン
ズの処方箋発行について言及している。コンタクトレンズの処方箋は薬の処方箋
と同じように患者さんに渡し,安全管理上問題のない範囲で提供するのが原則で
ある。医者は処方箋の有効期限を明記し,経過観察期間を過ぎた処方箋の有効性
がなくなることとする。処方箋発行を拒否することは医師の権利の乱用となる。
コンタクトレンズのもつ医療上の意味,危険性を患者さんによく理解してもらう
ことが大切である。

参考文献
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